不動産の鑑定評価とは
不動産の価格には実勢価格や時価などが使われることがありますが、その概念はやや曖昧です。
これは、不動産が通常の商品とは違って量産できないため、同じものはふたつとないが故に合理的な取引市場が完全に形成されないことによるものです。
そのため、売買当事者の特殊な事情、例えば売り急ぎや買い進み、特別な利害関係や縁故関係などがその取引価格に影響を与えている場合が多く、このような事情を基に成立した時価や実勢価格は必ずしもその不動産の適正な価格を反映しているとは限りません。よって、世間一般に言われる実勢価格には、特殊な事情の下に成立した価格、単に売主の希望価格、不動産広告に掲載された売却希望価格を指す場合も含まれ、実勢価格や時価と呼ばれる概念には論理的な根拠が乏しく、当然その価値には幅が生じるといえます。
これに対し,不動産鑑定士によって求められる不動産鑑定評価額は売手にも買手にも偏らない客観的な交換価値を表すものであり,多くの取引事例によって実証され、不動産の経済的価値である効用、収益性等によって検証された『不動産の客観的な価格』といえます。
国家資格を有する不動産鑑定士による不動産鑑定評価額が『不動産の客観的な価格』であるからこそ、不動産鑑定評価書は投資判断、税務、係争、売買等において幅広くご活用頂いています。
一般鑑定について
総研では、不動産の売買や賃貸借のときに必要な鑑定評価・担保評価、相続財産の評価など、様々な不動産鑑定評価に対応しています。
不動産の売買・相続、等価交換等の鑑定評価
不動産の売買、特に関連会社間の売買では恣意性があると見られやすく、また、時価より著しく低い価額または高い価額で取引をした場合、税務上問題となるケースがあるため、不動産鑑定評価によって時価売買であることを証明することが有効です。
公平な遺産分割を行うためには、相続資産の価値を正しく把握することが必要です。現預金の場合には問題になることは少ないですが、不動産の場合には適正な時価を知ることは容易ではありません。特に、貸付地や貸家建付地、底地といった不動産の場合、財産評価基本通達における評価額と鑑定評価額とで大きな差が生じることもありますので、遺産分割の際には不動産鑑定評価をご活用下さい。
不動産を賃貸借する場合の賃料の鑑定評価
「借地借家法32条1項」では固定資産等の費用の増減、土地・建物の価格の増減、近隣の類似家賃に比較して不相当となった場合など、契約の条件に関わらず、当事者は将来に向かって賃料の増減額の請求をすることができると規定されています。しかし、増減額請求ができるとはいっても、貸主・借主双方の意見がすぐさま合致することは稀と思われます。このような場合に、中立・公平な鑑定評価によって適正な賃料が示せれば貸主・借主双方にとって納得のいく地代・家賃の決定が可能になります。このような地代・家賃のほか、借地権、借家権、底地などの権利の価値にも鑑定評価がお役に立ちます。
不動産証券化、不動産流動化のための鑑定評価
資産流動化法による不動産の取引やプライベートファンド等が不動産を取得する場合に不動産鑑定評価が必要となります。評価に当っては、豊富な経験と専門的知識、そして、マーケットにおける各種データや情報の集約、キャッシュフローの分析が必要となり、投資家保護の観点から精度の高い、客観的且つ中立的な鑑定評価が求められます。
会社の設立・増資時に現物出資する鑑定評価
現物出資には多くの制約があり、その1つが検査役の選任です。原則として財産の評価について「裁判所の選任した検査役」を選任してもらい調査を受ける必要があります(会社法207.208条)。ところがこの検査役の選任には、通常数ヶ月の期間と多くの費用がかかるため、不動産を現物出資する場合には、不動産鑑定士による不動産鑑定評価書及び弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人よる財産価格証明を受けた場合は検査役の調査が不要になると定められています(同33条10項3号、同207条9項4号、同284条9項4号)。よって、不動産鑑定及び財産価格証明により、検査役の調査が不要となりスムーズに現物出資を進めることが可能です。
会社更生法、民事再生法に基づく鑑定評価
企業の破産において不動産鑑定評価が利用される場合として、破産手続開始時の財産評定に係る場合、不動産の任意売却及び担保権消滅許可制度に係る場合、営業または事業の譲渡に関連する場合等があります。また、民事再生法に基づく「早期売却価格」を求める場合、会社更生法または民事再生法に基づく「事業の継続を前提とした評価を行う場合」にも不動産鑑定評価が有効です。
公的評価について
国や地方公共団体などの公的機関から依頼を受けて、以下の公的評価業務を行っています。
地価公示法及び国土利用計画法に基づく標準地(基準地)の鑑定評価
地価公示は地価公示法に基づき、土地鑑定委員会(国土交通省)が毎年1回(1月1日時点の価格)公示する標準地の価格です。地価調査は国土利用計画法に基づき、都道府県が毎年1回(7月1日時点の価格)発表する基準地の価格です。
これら価格は一般の土地取引の際の目安とされたり、不動産鑑定士の鑑定評価や公共用地の取得価格などを決める際のよりどころとなるなど様々な役割を担っています。
相続税路線価の評価
相続税路線価は相続税および贈与税の算定基準となる土地評価額で、税務署からの依頼により、当路線価の基となる標準地の鑑定評価を行っています。なお、相続税評価(路線価)は、地価公示価格水準の8割程度とされています。
固定資産税評価
固定資産税評価額は、固定資産税・不動産取得税などを算定する際に用いられる評価額で、市町村からの依頼により、固定資産税路線価の基となる標準宅地の鑑定評価を行っています。なお、固定資産税評価(路線価)は、地価公示価格水準の7割を目途とされています。